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施設長コラム

「先生」と呼ばれて四十五年


「先生」という言葉に込められた意味の多様性と奥深さに、ある時つくづくと考えさせられ、
反省させられたことがありました。
それまではただ“先にうまれた人”に対して使う語ということで納得し、気楽に聞き、時には“良い気になって”返事をしていました。しかしそれではいかにもつまらないと思い直し、“先ず生きている人”と読むことにしました。でもその解釈は“息をしていれば良い”段階から、“生きるとは如何なることか”という哲学的な段階まであり、返って難しい命題になってしまいました。
先ず、「先生」と呼ばれる職業を挙げてみると、教師や医師(歯科医師、獣医師も)を始めとして、代議士に代表される“議員”職、華道、剣道、料理教室等その道の“指導者”あるいは先導者です。ときに、会話の内容によっては知的障害のある人を“あの先生”と隠語的に呼ぶことも聞かれました。即ち、純粋に敬愛、尊敬の念をもって使う場合から、蔑視を含んでいる場合まで実に幅広い段階があります。
しかして、自分が期待する“先生像”と期待される“先生像”は同じと見做して良いのか?自分はどの程度の評価を与えられているのか?結局、解答は得られない問いを抱いたまま今日まで過ごしてきました。また、同業者がお互いを“先生”と呼び合うのは不適当で、場合によっては不遜なことではないかと考え、少なくとも自分は社会通念以上の評価を自分に与えないことで妥協しました。そして、自分に信頼をよせてくれる人の期待を裏切らない知識と技術の獲得には常に貪欲であろうとしてきました。
いつの時代に始まった呼称かは判りませんが、便利なようで私にとっては悩ましい“語”でありましたので、“返上してしまえばどんなにさっぱりするだろう”と楽しみに待っています。

さて、このコラムを始めましてから、満5年になりました。少しでも独創的な内容を維持しようとして参りましたが、毎月というのは結構きつく、ついに持ち合わせが底をついてまいりましたので、このあたりで一旦終了とさせて頂きます。つたないものに長い間お付き合い頂きましてありがとうございました。
皆様の平安とご健勝を心から祈念いたします。                          平成28年3月


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