施設長コラム

歩く


お年寄りに「あなたはリハビリを受けるにあたって、どうなりたいと思っておられますか」
という質問をして、多かったのは「歩けるようになりたい。伝い歩きでも、シルバーカーを使ってでも
独りで歩きたい」という答えでした。

歩けるということが、そんなに望ましく良いことであることを私たちは忘れています。
“失ってはじめて判る有難さ”の上位にあげられる能力でしょう。およそ満一歳で獲得し、以来日頃は
まったく意識することなく歩いている状況を振り返ってみようと思いますが、お付き合いいただけます
でしょうか。

歩くとは“自分の立ち位置を変える行為”で、歩かなければならない理由は三様。

1)今いる位置に留まっていられない
自分の要求あるいは衝動によって、または、他から強制されて(追われて、あるいは、義務として)。
出て行かなければならない。逃げなければならない。あるいは、居たくない。etc…。
2)移動することが目的で歩く
体調改善あるいは維持のため。精神力強化が目的で。無心になるため。思索のため。
平和運動あるいは抗議活動に参加。巡礼。etc…。
3)目的あるいは目的地に向かって歩く
“物”を得るため。学習あるいは修行をしに行く。思想や宗教的に開放される地を目指して。etc…。

歩くのは一人(同行二人でも)ですか、二人(どういう関係の人と)ですか、それともグループですか。
「何時、どんな所を、何の目的で、どのようにして歩きましたか」という質問に対して思い浮かぶ情景
が多いほど心が豊かで、潤いのある人生を送った人といえるように思いますが如何でしょう。
人の身体機能は生後間もなくから“成長・発達”と“老化”が同時進行しており、30~35歳頃までは前者が、
それを過ぎると後者が優位になります。歩行はそのどちらにも生体護持に有利な効果があります。
そして、歩くことは心・肺や骨格筋に対してだけでなく、消化管運動や脳の活性化にも重要であることが
証明されています。乗り物の発達によって歩くことが非常に少なくなった現代であればこそ、また、自然
環境が過酷になることが明らかになった近未来を生き抜くためにも、心身両面の鍛錬を目指して歩かれる
ことを強く進めたいと思います。

(“歩行の疾病予防効果”が「東京都の健康長寿医療センター」のチームによって大規模に
研究されてますので、近いうちに公開されると思います)


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