トップ > 施設長コラム > 心を写す鏡は心

施設長コラム

心を写す鏡は心

鏡といえば現在はガラス製と決まっていますが、私どもの若い頃は手桶に汲んだ水や、
磨き上げた戸板であり、もうすこし年代をさかのぼれば磨いた銅版や刃物でした。
時代の移ろいには関わりなく全ての女性が毎日何回も鏡の前に座って見とれ、
染みや皺はできの悪い鏡のせいにしておられるようです。
幸か不幸かガラスの鏡が写すことができるのは皮膚の表面だけでして、
内面あるいは心を写すことができるのは“自分以外の人の心”しかありません。
人に向かって発する言葉、表情あるいは態度はどんな内容であっても“全て質問になっている”と言われます。
何故なら文字どうりの質問であれば当然答えが返されますが、疑問符のない言動、
たとえば、「おはよう」とか「あいにくの雨ですね」といった言葉にも、
ただ“片手を挙げるだけ”あるいは“しかめっ面でにらむ”行為に対しても、相手に届いている限り、
必ず何らかの反応すなわち“返事”が返ってきます。
相手に生じる反応は自分が引き起こしているわけですから、現れた反応を冷静に分析すれば
“自分の心の状態を判断する”ことができますし、“相手の人格を測定する”こともできます。
また、人に接して初期段階で受けた印象と人物評価はその後の接遇態度を決定し、
パターン化してしまうものですから、ある程度交流が続いた後でも、先入観にとらわれない評価と
率直な言動が重要です。そして、意見が食い違って、相手を怒らせてしまったとき、
自分の内面あるいは表現のどこにその原因があったかを分析し、可能な限り早く軌道を修正して、
関係改善を計ることは自分を磨くうえで極めて有効です。
少なくとも「自分のどこが悪かったのでしょうか?」という愚問だけは発したくないものです。
真摯に反省し、反省の内容を率直に相手に伝えることによって信頼を高め、
より一層深い関係を築くことができます。
周りの良い鏡を良い状態で維持し、どれだけ良い鏡を持っているかが、
その人自身の鏡の磨かれ具合を反映していることにもなるでしょう。
自分の鏡を磨く心構えを諭した判りやすい歌を一首。
「吾が良きに人の悪しきはなかりけり人の悪しきは吾が悪しきなり」
                                     ―下村湖人―


ページの先頭へ

〒426-0033 藤枝市小石川町2-8-13

TEL: 054-647-3833  FAX:054-647-3831

医療法人社団凜和会 介護老人保健施設 フォレスタ藤枝